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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

いつまでもこのような不平を超越しないでいては自分のような弱い神経をもったものは生存そのものが危うくなるであろう。

汽船の外でも西洋小間物屋の店先や、居酒屋の繩のれんの奥から聞こえて来るのが通りすがりに聞かない事はなかった。そういうのは大概「金の逃げ出す音」の種類に属するものであった。しかしそれはこっちで逃げさえすれば追っかけて来ないから始末がよかった。

蓄音機のラッパというものも私にはあまり気持ちのいいものではなかった。器械全体の大きさに対してなんとなく均衡を失して醜い不安な外観を呈するものである。一寸法師が尨大なメガフォーンをさしあげてどなっているような感じがある。これが菊咲き朝顔のように彩色されたのなどになるといっそう恐ろしい物に見えるのである。

グラモフォーンに対する私の妙な反感がいくらか柔らげられるような機会が来たのは私が三十二の年にドイツへ行っていた時の事である。かの地の大使館員でMという人と知り合いになったがその人がラッパのない、小さな戸棚のような形をした上等の蓄音機をもっていた。そしてかの地で聞く機会の多いオペラのアリアや各種器楽のレコードを集めて、それを研究し修練してわびしいひとり居の下宿生活を慰めていた。