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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

た遠藤は、「まあ僕の部屋へ来て下さい」と無理に二人を、彼の部屋へ引ぱり込みました。遠藤は独ではしゃいで、夜が更けているのも構わず、女中を呼んでお茶を入れさせたりして、カフェから持越しの惚気話を繰返すのでした。――三郎が彼を嫌い出したのは、その晩からです――その時、遠藤は、真赤に充血した脣をペロペロと嘗め廻しながら、さも得意らしくこんなことを云うのでした。

「その女とですね、僕は一度情死をしかけたことがあるのですよ。まだ学校にいた頃ですが、ホラ、僕のは医学校でしょう。薬を手に入れるのは訳ないんです。で、二人が楽に死ねる丈けの莫児比を用意して、聞いて下さい、鹽原へ出かけたもんです」

そう云いながら、彼はフラフラと立上って、押入の所へ行き、ガタガタ襖を開けると、中に積んであった一つの行李の底から、ごく小さい、小指の先程の、茶色の瓶を探して来て、聴手の方へ差出すのでした。瓶の中には、底の方に、ホンのぽっちり、何かキラキラと光った粉が這入っているのです。

「それですよ。これっぽっちで、十分二人の人間が死ねるのですからね。……併し、あなた方、こんなこと喋っちゃいやですよ。