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やねうらのさんぽしゃ
屋根裏の散歩者
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页
三郎は始めの内こそ、ビクビクもので、明智の問に答えていましたが、慣れて来るに随って、段々横着になり、はては、明智をからかってやり度い様な気持にさえなるのでした。
「君はどう思うね。ひょっとしたら、これは他殺じゃあるまいか。ナニ別に根拠がある訳じゃないけれど、自殺に相違ないと信じていたのが、実は他殺だったりすることが、往々あるものだからね」
どうだ、流石の名探偵もこればっかりは分るまいと、心の中で嘲りながら、三郎はこんなことまで云って見るのでした。
それが彼には愉快で堪らないのです。
「そりゃ何とも云えないね。僕も実は、ある友達からこの話を聞いた時に、死因が少し曖昧だという気がしたのだよ。どうだろう、その遠藤君の部屋を見る訳には行くまいか」
「造作ないよ」三郎は寧ろ得々として答えました。「隣の部屋に遠藤の同郷の友達がいてね。それが遠藤の親父から荷物の保管を頼まれているんだ。君のことを話せば、きっと喜んで見せて呉れるよ」
それから、二人は遠藤の部屋へ行って見ることになりました。その時、廊下を先頭になって歩きながら三郎はふと妙な感じにうたれたことです。
「犯人自身が、探偵をその殺人の現場へ案内するなんて、古往今来ないこったろうな」