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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

さて、遠藤が死んでから丁度三日目のことでした。三郎が今夕飯を済ませて、小楊子を使いながら、鼻唄かなんか歌っている所へ、ヒョッコリと久し振りに明智小五郎が訪ねて来ました。

「ヤア」

「御無沙汰」

彼等はさも心安げに、こんな風の挨拶を取交したことですが、三郎の方では、折が折なので、この素人探偵の来訪を、少々気味悪く思わないではいられませんでした。

「この下宿で毒を飲んで死んだ人があるって云うじゃないか」

明智は、座につくと早速、その三郎の避けたがっている事柄を話題にするのでした。恐らく彼は、誰かから自殺者の話を聞いて、幸、同じ下宿に三郎がいるので、持前の探偵的興味から、訪ねて来たのに相違ありません。

「アア、莫児比※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)でね。僕は丁度その騒ぎの時に居合せなかったから、詳しいことは分らないけれど、どうも痴情の結果らしいのだ」

三郎は、その話題を避けたがっていることを悟られまいと、彼自身もそれに興味を持っている様な顔をして、こう答えました。

「一体どんな男なんだい」

すると、すぐ又明智が尋ねるのです。それから暫くの間、彼等は遠藤の為人について、死因について、自殺の方法について、問答を続けました。