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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

入口の締りのしてあったこと、毒薬の容器が死人の側に落ちていたこと、其他凡ての事情が、遠藤の自殺を疑いないものに見せていたのですから。

併し、この問答を聞いた三郎は、まるで足許の地盤が、不意にくずれ始めた様な驚きを感じました。そして、何故こんな所へ明智を連れて来たのだろうと、自分の愚さを悔まないではいられませんでした。

明智はそれから、一層の綿密さで、部屋の中を調べ始めました。無論天井も見逃す筈はありません。彼は天井板を一枚一枚叩き試みて、人間の出入した形跡がないかを調べ廻ったのです。が、三郎の安堵したことには、流石の明智も、節穴から毒薬を垂らして、そこを又、元々通り蓋して置くという新手には、気附かなかったと見えて、天井板が一枚もはがれていないことを確めると、もうそれ以上の穿鑿はしませんでした。

さて、結局その日は別段の発見もなく済みました。明智は遠藤の部屋を見て了うと、又三郎の所へ戻って、暫く雑談を取交した後、何事もなく帰って行ったのです。ただ、その雑談の間に、次の様な問答のあったことを書き洩らす訳には行きません、なぜといって、これは一見極くつまらない様に見えて、その実、このお話の結末に最も重大な関係を持っているのですから。