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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

それに、あの時、懐中電燈で十分検べた筈ではありませんか。

「君が殺したのではないかね。遠藤君は」

明智は無邪気にニコニコしながら、――それがこの場合一層気味悪く感じられるのです――三郎のやり場に困った目の中を、覗き込んで、とどめを刺す様に云うのでした。

三郎は、もう駄目だと思いました。仮令明智がどんな巧みな推理を組立てて来ようとも、ただ推理丈けであったら、いくらでも抗弁の余地があります。けれども、こんな予期しない証拠物をつきつけられては、どうすることもできません。

三郎は今にも泣き出そうとする子供の様な表情で、いつまでもいつまでも黙りこくって衝立っていました。時々ボンヤリと霞んで来る目の前には、妙な事に、遠い遠い昔の、例えば小学校時代の出来事などが、幻の様に浮き出して来たりするのでした。

それから二時間ばかり後、彼等はやっぱり元のままの状態で、その長い間、殆ど姿勢さえもくずさず、三郎の部屋で相対していました。

「有難う、よくほんとうのことを打開けて呉れた」最後に明智が云うのでした。「僕は決して君のことを警察へ訴えなぞしないよ、ただね僕の判断が当っているかどうか、それが確めたかったのだ。