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やねうらのさんぽしゃ
屋根裏の散歩者
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页
君も知っている通り、僕の興味はただ『真実を知る』という点にあるので、それ以上のことは、実はどうでもいいのだ。それにね、この犯罪には、一つも証拠というものがないのだよ。シャツの釦、ハハ……、あれは僕のトリックさ。何か証拠品がなくては、君が承知しまいと思ってね。この前君を訪ねた時、その二番目の釦がとれていることに気附いたものだから、一寸利用して見たのさ。ナニ、これは僕が釦屋へ行って仕入れて来たのだよ。釦がいつとれたなんていう事は、誰しもあまり気附かないことだし、それに、君は興奮している際だから、多分うまく行くだろうと思ってね。
僕が遠藤君の自殺を疑い出したのは君も知っている様に、あの目覚し時計からだ。あれから、この管轄の警察署長を訪ねて、ここへ臨検した一人の刑事から、詳しく当時の模様を聞くことが出来たが、その話によると、莫児比※(「さんずい+(日/工)」、第4水準2-78-60)の瓶が煙草の箱の中にころがっていて、中味が巻煙草にこぼれかかっていたというのだ。警察の人達はこれに別段注意を払わなかった様だが、考えて見れば甚だ妙なことではないか、聞けば、遠藤は非常に几帳面な男だというし、ちゃんと床に這入って死ぬ用意までしているものが、毒薬の瓶を煙草の箱の中へ置くさえあるに、而も中味をこぼすなどというのは、何となく