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ぞくほうしこう

差別の根源を考える

喜田 貞吉

喜田貞吉『差別の根源を考える』。同一底本的分册已合并为一书。收入:俗法師考、融和促進、融和問題に関する歴史的考察。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 147,985 字 · 289 页

青空文庫

しかしこれは少くとも今日においては、きわめて間違った考えだと言わねばなりません。なるほど旧幕時代のように、すべてが祖先のままに世襲せられた時代ならば、それもやむをえなかったでしょう。あるいはその祖先の栄誉を傷つけざらんがために、それによって自重の料となすというのならば、それもまたよいでありましょう。しかし祖先の身分の賤しかったということが、今日においてはすこしもその子孫をして、卑下せしめる理由とはなりません。もし私をして忌憚なく言わしめるなら、父祖のお蔭で自分の実力以上に、社会的に栄誉の地位を得ているものよりも、もと賤しい家から出て、自分の努力によってその栄誉を贏ちえたものの方が、いくら尊いかわからないのであります。繰り返していう、祖先の歴史は決してその子孫に累いをなすべきものではない。現に今日の華士族達の中において、朝敵謀反人、切取強盗、海賊の張本等の子孫が、よしや少からず存在するとしても、また猿楽役者の祖先が、かつては非人と言われた唱門師支配の下におったという履歴を有していても、それが幾分でもその子孫に累いをなしているでありましょうか。否、某伯爵家の如きは、その祖先が謀反人であったということを意識したがために、その償いとして維新の際特に王事に竭し、小藩ながら伯爵を贏ちえたのだとの説をも聞いております