轻松读懂日语经典作品
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にじ
彩虹
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,898 字 · 28 页
「桃園のことも忘れないで呉れ」
と、投げつけるように云った。
伊兵衛は振返って相手の眼を見、しずかにうなずいて門を出た。
その月二十日は伊兵衛の誕生日で、毎年ごく親しい者ばかり招いて、ささやかに祝うのが例になっている。その日も数人の客を招いて昼※を※したが、それが終ってから、母親のほうの席へ呼ばれて来ていたさえと会った。父が亡くなってから、いちど伊兵衛が母を桃園へ食事をしに案内した。それ以来ときどき母は、親しい夫人たちと食事にゆき、桃園の家族とも口をきくようになった。
「さえというむすめはよいこですね」
そんなことを云い云いしたが、去年あたりからは時おり自宅へ呼んだりするようにさえなったのである。
「ここでいいでしょう」
伊兵衛がさえを呼びにゆくと、母はちょっと気遣わしそうな眼つきでそう云った。
「……話ならここでなさいな」
「いや少しこみいった事ですから」
伊兵衛はそう答えてさえを自分の居間へ伴れていった。……着ている物も化粧もかくべつ常と変ってはいないのだが、明るく冴え冴えとした顔つきや、楽しそうな起ち居のようすが、毎とは際立って美しくみえる、伊兵衛はちょっと眩しそうな表情で、暫らくさえの姿を見まもっていた。