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にじ
彩虹
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,898 字 · 28 页
これで要談は済んだと云って、宗之助はさっさと立って帰っていった。……伊兵衛はそのあとで香をたき、もう、さかりを過ぎた庭の梅を見ながら、登城の刻の来るまでじっと考えこんでいた。昨夜の宴の酒から始まって、なにか決定的なものが動きだしている、それは単に「伊兵衛を凌ごう」とする程度のものではない、昨夜に続いて各奉行所の記簿検察、さえに対する求婚、こうして矢継ぎ早に、先手先手とのしかかってくる宗之助の態度には、たしかになにかを決定的にしようとする意志がある。
――宗之助と自分との、かつて最も親しかった関係が、今や新しい方向へ転換しようとしている、この転換がどんな意味をもつかまだわからない、しかし見はぐらない要心は欠かせないぞ。
伊兵衛は肚をきめるという感じでそう思い、やがて登城するために立った。……彼は肚をきめたのである、その日すぐ年寄役四人を集めて相談し、現国老である大槻又左衛門の加判を得て、各奉行所へ「記簿検閲」の旨を通告した。下城するとき脇田家へ寄ってその由を伝えると、宗之助は、
「では明日、金穀方から始めよう」
と云い、帰ろうとする伊兵衛の背中へ、