轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かげをふまれたおんな
影を踏まれた女
岡本 綺堂
「講談倶楽部」1925(大正14年)9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,608 字 · 23 页
三
おせきは身をふるわせて要次郎に取り縋った。
「おまえさん、早く追って……。」
「畜生。叱っ、叱っ。」
犬は要次郎に追われながらも、やはりおせきに付きまとっているように、かれの影を踏みながら跳り狂っているので、要次郎も癇癪をおこして、足もとの小石を拾って、二、三度叩きつけると、二匹の犬は悲鳴をあげて逃げ去った。
おせきは無事に自分の家へ送りとどけられたが、その晩の夢には、二匹の犬がかれの枕もとで駈けまわるのを見た。
三
今まで、おせきは月夜を恐れていたのであるが、その後のおせきは、昼の日光をも恐れるようになった。日光のかがやくところへ出れば、自分の影が地に映る。それを何者にか踏まれるのが怖ろしいので、かれは明かるい日に表へ出るのを嫌った。暗い夜を好み、暗い日を好み、家内でも薄暗いところを好むようになると、当然の結果としてかれは陰鬱な人間となった。
それが嵩じて、あくる年の三月頃になると、かれは燈火をも嫌うようになった。月といわず、日といわず、燈火といわず、すべて自分の影をうつすものを嫌うのである。かれは自分の影を見ることを恐れた。かれは針仕事の稽古にも通わなくなった。