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かげをふまれたおんな

影を踏まれた女

岡本 綺堂

「講談倶楽部」1925(大正14年)9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,608 字 · 23 页

青空文庫

あくる十三日、きょうも朝から晴れていた。ひる少し前に弱い地震があった。八つ頃(午後二時)に大野屋の伯母が近所まで来たといって、近江屋の店に立ち寄った。呼ばれて、おせきは奥から出て来て、伯母にもひと通りの挨拶をした。伯母が帰るときに、お由は表まで送って出て、往来で小声でささやいた。

「おせきの百日目というのは昨夜だったのですよ。」

「そう思ったからわたしも様子を見に来たのさ。」と、伯母も声をひそめた。「そこで、何か変わったことでもあって……。」

「それがね、姉さん。」と、お由はうしろを見かえりながら摺り寄った。「ゆうべも九つ(午後十二時)を合図におせきの寝床へ忍んで行って、寝ぼけてぼんやりしているのを抱き起して、うちの人が蝋燭をかざしてみると……壁には骸骨の影が映って……。」

お由の声は顫えていた。伯母も顔の色を変えた。

「え、骸骨の影が……。見違いじゃあるまいね。」

「あんまり不思議ですからよく見つめていたんですけれど、確かにそれが骸骨に相違ないので、わたしはだんだんに怖くなりました。わたしばかりでなく、うちの人の眼にも見えたというのですから、嘘じゃありません。