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かげをふまれたおんな

影を踏まれた女

岡本 綺堂

「講談倶楽部」1925(大正14年)9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,608 字 · 23 页

青空文庫

」

「まあ。」と、伯母は溜め息をついた。「当人はそれを知らないのかえ。」

「ひどく眠がっていて、またすぐに寝てしまいましたから、なんにも知らないらしいのです。それにしても、骸骨が映るなんて一体どうしたんでしょう。」

「下谷へ行って訊いてみたの。」と、伯母は訊いた。

「うちの人は下谷へ行って、その話をしましたところが、行者さまはただ黙って考えていて、わたしにもよく判らないと言ったそうです。」と、お由は声を曇らせた。「ほんとうに判らないのか、判っていても言わないのか、どっちでしょうね。」

「さあ。」

判っていても言わないのであろうと、伯母は想像した。お由もそう思っているらしかった。もしそうならば、それは悪いことに相違ない。善いことであれば隠すはずがないとは、誰でも考えられることである。二人の女は暗い顔を見合わせて、しばらく往来中に突っ立っていると、その頭の上の青空には白い雲が高く流れていた。

お由はやがて泣き出した。

「おせきは死ぬのでしょうか。」

伯母もなんと答えていいか判らなかった。かれも内心には十二分の恐れをいだきながら、ともかくも間にあわせの気休めを言っておくのほかはなかった。