轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页

青空文庫

「君は、工場に泊っているのか」

と、訊ねた。

この人が社長さんと聞いていたので、ぼくは「はい、そうであります」と云ったような口調で固くなって答えた。その時は、何か簡単なことだけしか問われなかったが、ふた月三月たった頃、こんどは工場で、「一度、夜でも、ぼくの家へ遊びに来い」と私宅の書いてある名刺を渡された。

両国河岸の百本杭の辺も、まだ閑静な家やら木々も残っていた頃である。指定された晩、ぼくは百本杭の社長邸へ恐々行ってみた。晩飯を御馳走してくれた。そしてS氏から「君は、苦学しているという事だが、工場勤めでは、勉強も出来まい。それに本所辺の夜間学校などへ通ってみたところで、将来の足しにはならん。工業方面へ出たいなら、蔵前ぐらいは、やっておかなくっちゃ駄目だ。蔵前高工を目ざしたらどうだね」というような口ぶりだった。

家庭の都合で、中学も出ていません、と答えると、「だから、ほんとに君が勉強したいのなら、勤務も変えて上げる。蔵前とは限るまい。どんな方法でも考えられよう。保証人にもなってやる。ひとつ、熟考しておき給え」と云い、それから自分の事業は、発展の途上にある。