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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

骨ばかり意地悪く高く残った頬、人間らしい暖味を失った蒼く黄色い皮、落ち込んで動く余裕のない眼、それから無遠慮に延びた髪と髯、――どう見ても兄の記念であった。

ただ兄の髪と髯が死ぬまで漆のように黒かったのにかかわらず、余のそれらにはいつの間にか銀の筋が疎らに交っていた。考えて見ると兄は白髪の生える前に死んだのである。死ぬとすればその方が屑よいかも知れない。白髪に鬢や頬をぽつぽつ冒されながら、まだ生き延びる工夫に余念のない余は、今を盛りの年頃に容赦なく世を捨てて逝く壮者に比べると、何だかきまりが悪いほど未練らしかった。鏡に映るわが表情のうちには、無論はかないと云う心持もあったが、死に損なったと云う恥も少しは交っていた。また「ヴァージニバス・ピュエリスク」の中に、人はいくら年を取っても、少年の時と同じような性情を失わないものだと書いてあったのを、なるほどと首肯いて読んだ当時を憶い出して、ただその当時に立ち戻りたいような気もした。

「ヴァージニバス・ピュエリスク」の著者は、長い病苦に責められながらも、よくその快活の性情を終焉まで持ち続けたから、嘘は云わない男である。