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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

町井さんは、もうだいぶん病気がよくおなりだから、明日はきっと御雑煮が祝えるに違ないと云って余を慰めた。

除夜の夢は例年の通り枕の上に落ちた。こう云う大患に罹ったあげく、病院の人となって幾つの月を重ねた末、雑煮までここで祝うのかと考えると、頭の中にはアイロニーと云う羅馬字が明らかに綴られて見える。それにもかかわらず、感に堪えぬ趣は少しも胸を刺さずに、四十四年の春は自ずから南向の縁から明け放れた。そうして町井さんの予言の通り形ばかりとは云いながら、小さい一切の餅が元日らしく病人の眸に映じた。余はこの一椀の雑煮に自家頭上を照らすある意義を認めながら、しかも何等の詩味をも感ぜずに、小さな餅の片を平凡にかつ一口に、ぐいと食ってしまった。

二月の末になって、病室前の梅がちらほら咲き出す頃、余は医師の許を得て、再び広い世界の人となった。ふり返って見ると、入院中に、余と運命の一角を同じくしながら、ついに広い世界を見る機会が来ないで亡くなった人は少なくない。ある北国の患者は入院以後病勢がしだいに募るので、附添の息子が心配して、大晦日の夜になって、無理に郷里に連れて帰ったら、汽車がまだ先へ着かないうちに途中で死んでしまった。