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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

医者の許可もさる事だが、友人の許可を得なければいかんと云うのが三山君の挨拶であった。それから二三日して三山君が宮本博士に会ってこの話をすると、博士は、なるほど退屈をすると胃に酸が湧く恐れがあるからかえって悪いだろうと調停してくれたので、余はようやく助かった。

その時余は三山君に、

遺却新詩無処尋。 ※(「口+荅」、第4水準2-4-16)然隔※(「片+(戸の旧字+甫)」、第3水準1-87-69)対遥林。

斜陽満径照僧遠。 黄葉一村蔵寺深。

懸偈壁間焚仏意。 見雲天上抱琴心。

人間至楽江湖老。 犬吠鶏鳴共好音。

と云う詩を遺った。巧拙は論外として、病院にいる余が窓から寺を望む訳もなし、また室内に琴を置く必要もないから、この詩は全くの実況に反しているには違ないが、ただ当時の余の心持を咏じたものとしてはすこぶる恰好である。宮本博士が退屈をすると酸がたまると云ったごとく、忙殺されて酸が出過ぎる事も、余は親しく経験している。詮ずるところ、人間は閑適の境界に立たなくては不幸だと思うので、その閑適をしばらくなりとも貪り得る今の身の嬉しさが、この五十六字に形を変じたのである。