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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

一通を開けて見ると「無事御帰京を祝す」と書いてあった。そうしてその差出人は満洲にいる中村是公であった。他の一通を開けて見ると、やはり無事御帰京を祝すと云う文句で、前のと一字の相違もなかった。余は平凡ながらこの暗合を面白く眺めつつ、誰が打ってくれたのだろうと考えて差出人の名前を見た。ところがステトとあるばかりでいっこうに要領を得なかった。ただかけた局が名古屋とあるのでようやく判断がついた。ステトと云うのは、鈴木禎次と鈴木時子の頭文字を組み合わしたもので、妻の妹とその夫の事であった。余は二ツの電報を折り重ねて、明朝また来るべき妻の顔を見たら、まずこの話をしようかと思い定めた。

病室は畳も青かった。襖も張り易えてあった。壁も新に塗ったばかりであった。万居心よく整っていた。杉本副院長が再度修善寺へ診察に来た時、畳替をして待っていますと妻に云い置かれた言葉をすぐに思い出したほど奇麗である。その約束の日から指を折って勘定して見ると、すでに十六七日目になる。青い畳もだいぶ久しく人を待ったらしい。

思いけりすでに幾夜の蟋蟀

その夜から余は当分またこの病院を第二の家とする事にした。