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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

その頃修善寺には北白川の宮がおいでになっていた。東洋城は始終そちらの方の務に追われて、つい一丁ほどしか隔っていない菊屋の別館からも、容易に余の宿までは来る事ができない様子であった。すべてを片づけてから、夜の十時過になって、始めて蚊の外まで来て、一言見舞を云うのが常であった。

そういう夜の事であったか、または昼の話であったか今は忘れたが、ある時いつものように顔を合わせると、東洋城が突然、殿下からあなたに何か講話をして貰いたいという御注文があったと云い出した。この思いがけない御所望を耳にした余は少からず驚いた。けれども自分でさえ聞かずにすめば、聞かずにいたいような不愉快な声を出して、殿下に御話などをする勇気はとても出なかった。その上羽織も袴も持ち合せなかった。そうして余のごとき位階のないものが、妄りに貴い殿下の前に出てしかるべきであるかないかそれが第一分らなかった。実際は東洋城も独断で先例のない事をあえてするのを憚って、確とした御受はしなかったのだそうである。

余の苦痛が咽喉から胃に移る間もなく、東洋城は故郷にある母の病を見舞うべく、去る人と入れ代ってひとまず東京に帰った。