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おもいだすことなど
思い出す事など
经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页
それは自己と外界との円満に調和した境地で、ちょうど天体の端から、無限の空間に足を滑らして落ちるような心持だとか聞いた。
「神聖なる疾」に罹った事のない余は、不幸にしてこの年になるまで、そう云う趣に一瞬間も捕われた記憶をもたない。ただ大吐血後五六日――経つか経たないうちに、時々一種の精神状態に陥った。それからは毎日のように同じ状態を繰り返した。ついには来ぬ先にそれを予期するようになった。そうして自分とは縁の遠いドストイェフスキーの享けたと云う不可解の歓喜をひそかに想像してみた。それを想像するか思い出すほどに、余の精神状態は尋常を飛び越えていたからである。ドクインセイの細かに書き残した驚くべき阿片の世界も余の連想に上った。けれども読者の心目を眩惑するに足る妖麗な彼の叙述が、鈍い色をした卑しむべき原料から人工的に生れたのだと思うと、それを自分の精神状態に比較するのが急に厭になった。
余は当時十分と続けて人と話をする煩わしさを感じた。声となって耳に響く空気の波が心に伝って、平らかな気分をことさらに騒つかせるように覚えた。口を閉じて黄金なりという古い言葉を思い出して、ただ仰向けに寝ていた。