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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

すると余は必ず去年の病気を憶い出す。

余は去年の病気と共に、新らしい天井と、新らしい床の間にかけた大島将軍の従軍の詩を憶い出す。そうしてその詩を朝から晩までに何遍となく読み返した当時を明らさまに憶い出す。新らしい天井と、新らしい床の間と、新らしい柱と、新らし過ぎて開閉の不自由な障子は、今でも眼の前にありありと浮べる事ができるが、朝から晩までに何遍となく読み返した大島将軍の詩は、読んでは忘れ、読んでは忘れして、今では白壁のように白い絹の上を、どこまでも同じ幅で走って、尾頭ともにぷつりと折れてしまう黒い線を認めるだけである。句に至っては、始めの剣戟という二字よりほか憶い出せない。

余は余の鼓膜の上に、想像の太鼓がどん――どんと響くたびに、すべてこれらのものを憶い出す。これらのものの中に、じっと仰向いて、尻の痛さを紛らしつつ、のつそつ夜明を待ち佗びたその当時を回顧すると、修禅寺の太鼓の音は、一種云うべからざる連想をもって、いつでも余の耳の底に卒然と鳴り渡る。

その太鼓は最も無風流な最も殺風景な音を出して、前後を切り捨てた上、中間だけを、自暴に夜陰に向って擲きつけるように、ぶっきら棒な鳴り方をした。