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おそろしきつや

恐しき通夜

海野 十三

「新青年」1931(昭和6)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页

青空文庫

2

大尉は専ら指揮を、理学士は器械部の目盛を読むことを、そして軍医がモルモットの動物反応を記録するのが役目だった。この三人の学者は、毎時間に、五分間を観測と記録に費すと、故障の突発しないかぎり、あとの五十五分間というものを過ごすのに、はなはだ退屈を感ずるのだった。

2

「この調子で、暁け方まで頑張るのは、ちと辛いね」と大蘆原軍医が、ポケット・ウィスキーの小さいアルミニューム製のコップを、コトリと卓上の上に置きながら云うのだった。

「軍医どのの栄螺料理が無ければ、儂は五十五分間ずつ寝るつもりだった」と川波大尉が、ポカポカ湯気のあがっている真黒の栄螺の壺を片手にとりあげ、お汁をチュッと吸ってから、そう云った。

「大蘆原軍医殿は、この栄螺の内臓を珍重されるようだが、僕はこんな味のものだとは、今日の今日まで知らなかった」と、星宮理学士は、長い箸を器用に使って、黄色味がかったプリプリするものを挾みあげると、ヒョイと口の中に抛りこんで、ムシャムシャと甘味そうに喰べた。

「そうです、これは一種異様の味がするでしょう。お気に入りましたか星宮君」と軍医は照れたような薄笑いを浮べ、ダンディらしい星宮理学士の口許に射るような視線をおくった。