轻松读懂日语经典作品
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じょうき
情鬼
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,393 字 · 35 页
日本と外国との間に板挟みになって、散々非道い目にあって悶え苦しんだ揚句が神経衰弱。心ない人からは無能呼ばわりをされる。さもなければ質の悪い婦人関係か、とにかく外交官には秘密が多いから、そうそう単純に片附けてしまうわけにはゆきませんよ。他殺だったら興味があるから新聞にもいろいろ書き立てられるでしょうが――」
「自殺となると地味ですから、余り新聞でも騒がないと仰しゃるんでしょう?」
夫人は私の顔を見て苦笑した。
それきり二人は小田切大使の自殺については話し合わなかった。
忙しい仕事に追われている私は遂々告別式にさえも行かれなかった。それがまた気になるので、恰度半日ばかり閑が出来たのを幸に、急に墓参を思い立った。
時候のいい頃だからいいようなものの、朝から荒れ模様であった空が、午後には暴風雨となった。荒れ狂う風雨の音を聞くと出足もしぶり勝となるが、やっと勇気を出して出かける決心をした。
ひどい荒れで、雨は横なぐりに円タクの窓に打ちつけた。そのしぶきを浴びて、座席のクッションまでしっとりと湿ってきた。私は運転台と座席の間に洋傘を広げて立てかけ、そのかげに小さくなっていた。