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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

お手伝によそから来た人でないことは、着なれた着物がふだんのままに、からだをつつんで馴染んでいる様子にうかがわれた。

あの女の人は誰でしょうかと小谷恒に聞くと、あの人は迢空の身の廻りを十年も気をつけて来た人で、女中代りにはたらいていて、歌も作る京都の生まれの人だといった。先生はあの人をばあやと呼んで、相当、気難しくつかっていられたが、あの人は無口で永く感心に仕えてくれたと小谷恒はいった。年若い男が絶えず迢空のそばにいて、その若い男と睦じく暮らしている毎日を、この美しい女中さんはどういう眼で眺め、どういう女気で何物かを察していたろうかと、私は神主が弔詞を読み上げるとしおしおと泣くこの人を、泣く人という言葉どおりの重さで眼にいれた。文学博士折口信夫は女の人には眼もくれない人ではない、かえって普通の人よりも純度が高く鋭い見立をしていた。私の家に来て病妻を見るとすぐ言われた。あ、あなたは童女に変りましたね、と。そういう鋭さを持つ迢空は、この十年も仕えるまだ若い女人を、ばあやと呼び、時にはしゃれて、おばばと古言葉で呼んで優しくはあったろうが、この人を女と見ることはほとんどなかったと小谷恒はいった。