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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
だから殆どの人が堀を好いていたのだ。お愛想がよいわけでもなく、いつも当り前の顔付で差し触りのないことを話している彼には、その無口をおぎなうために相手の方で機嫌とりのようなことを、話してしまうふうであった。こんな人は色魔なぞによくある型や人格なのだ、つまり、にたりにたりしながら相手の心を捉えるという行き方が、そのにたりにたりを除けば凡て堀の持っているフンイキであった。ところが彼は色魔どころか、大抵の女の人には優しく皆に好かれ、皆におなじように心を頒けている側の人だった。誰もこの堀の悪口をいった人を私はきいたことがなかった。
堀が女性的であったということは、声もそうだが、からだの肉つきにあぶらがあって、頬はまんまるかった。食べものも、おいもとか、じねんいもとか、卵料理とかが好きだった。唇は紅く髪も黒かった。病で床の中にいた時分、釈迢空が見舞いに軽井沢から来られる日に、彼は何を遠慮したのか、今日は起きられないと先生に言ってくれ、僕は起きないからと奥さんのたえ子に言った。だってそんなに元気なのにどうしてお会いにならないのですと言うと、訳はいわないで寝たきりだと言ってくれと、会わなかったのだ。