轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おうぎの
扇野
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页
水を浴びてみたり、うしろの日和山の上を歩きまわってみたが、飢餓に似たその衝動は抑えることがむずかしくなるばかりだった。できるだけ腹をへらしておいて酒を飲み、もっとも誘惑の強い宵のひと刻を、酔ってごまかすよりしかたがなかった。
おけいはなにも云わなかったが、酒の量がしだいに増すばかりなので、絵がうまく進まないとでも思ったらしい、「たまには外へ息ぬきにいってはどうか」などと云った。
おつると約束をした日からちょうど十日めに、桑名屋のおさとが訪ねて来た。
曇った日の黄昏どきで、栄三郎は風呂あがりの浴衣になり、ぼんやり広縁へ出たところだったが、誰か声をひそめて呼ぶ者があるので見ると、裏木戸のところにおさとがいて、手招きをしているのが見えた。あたりはもう暗くなりかけていたし、広縁からそこまではかなり距離があるから、初めはおつるかと思い、危うく声が出そうになった。――彼は手まねで「待っているように」という合図をし、すぐに母屋へいって外出するからと断わった。
「おすすめに従って息ぬきをして来るよ」とおけいに笑いながら云った、「早く帰るつもりだけれど、ことによるとおそくなるかもしれないから」