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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

「ばかにまた地味づくりじゃないか」道太がわざと言うと、お絹は処女のように羞かんでいた。

道太は今朝辰之助に電話をかけて、場所がないから、女連だけやることにした。後で二人ゆっくり行こうと言って断わっておいたけれど、お絹が勧めるので、やっぱり行くことにして、二階で著物を著かえて、下へ来ていた。お芳はまだ著かえなかった。

しかし劇場へ行ってみると、もう満員の札が掲って、ぞろぞろ帰る人も見受けられたにかかわらず、約束しておいた桟敷のうしろの、不断は場所のうちへは入らないような少し小高いところが、二三人分あいていた。お絹にきくと、いつもはお客の入らないところだけれど、場代さえ払えば融通してくれるはずだというのであった。

「これあいい。こんな所があるなら、二人くらい来たって平気だ。ここを取っておいて、辰ちゃんを呼ぼう。このくらいなら、何もそう案じることはなかったじゃないか」

「一人や二人どうにでもできますよ」

「せっかくこういう処があるんだから、辰之助に電話をかけよう。それとも車をやるか」

しかしお絹ははきはきしなかった。お芳とその連れが来たときのことも考えているらしかった。