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「しなゆうき」

支那游記

芥川 竜之介

芥川龙之介受报社之命游中国,出发前还笑话朋友怕晕船,结果自己一上船就吐得稀里哗啦。这趟旅行到底会见识到啥?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,859 字 · 105 页

青空文庫

しかしこれは日本人だと、能と云う物を知っているから、すぐにそのこつを呑みこんでしまう。椅子や机を積上げたのも、山だと思えと云われれば、咄嗟によろしいと引き受けられる。役者がちょいと片足上げたら、其処に内外を分つべき閾があるのだと云われても、これ亦想像に難くはない。のみならずその写実主義から、一歩を隔てた約束の世界に、意外な美しささえ見る事がある。そう云えば今でも忘れないが、小翠花が梅龍鎮を演じた時、旗亭の娘に扮した彼はこの閾を越える度に、必ず鶸色の子の下から、ちらりと小さな靴の底を見せた。あの小さな靴の底の如きは、架空の閾でなかったとしたら、あんなに可憐な心もちは起させなかったのに相違ない。

この道具を使わない所は、上に述べたような次第だから、一向我々には苦にならない。寧ろ私が辟易したのは、盆とか皿とか手燭とか、普通に使われる小道具類が如何にも出たらめなことである。たとえば今の梅龍鎮にしても、つらつら戯考を按ずると、当世に起った出来事じゃない。明の武宗が微行の途次、梅龍鎮の旗亭の娘、鳳姐を見染めると云う筋である。処がその娘の持っている盆は、薔薇の花を描いた陶器の底に、銀鍍金の縁なぞがついている。