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「しなゆうき」

支那游記

芥川 竜之介

芥川龙之介受报社之命游中国,出发前还笑话朋友怕晕船,结果自己一上船就吐得稀里哗啦。这趟旅行到底会见识到啥?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,859 字 · 105 页

青空文庫

若い支那人の馭者は腹立たしそうに、ぴしぴし馬を殴りつける。馬は煉瓦塀に鼻をつけた儘、無暗に尻ばかり躍らせている。馬車は無論顛覆しそうになる。往来にはすぐに人だかりが出来る。どうも上海では死を決しないと、うっかり馬車へも乗れないらしい。

その内に又馬車が動き出すと、鉄橋の架った川の側へ出た。川には支那の達磨船が、水も見えない程群っている。川の縁には緑色の電車が、滑かに何台も動いている。建物はどちらを眺めても、赤煉瓦の三階か四階である。アスファルトの大道には、西洋人や支那人が気忙しそうに歩いている。が、その世界的な群衆は、赤いタバアンをまきつけた印度人の巡査が相図をすると、ちゃんと馬車の路を譲ってくれる。交通整理の行き届いている事は、いくら贔屓眼に見た所が、到底東京や大阪なぞの日本の都会の及ぶ所じゃない。車屋や馬車の勇猛なのに、聊恐れをなしていた私は、こう云う晴れ晴れした景色を見ている内に、だんだん愉快な心もちになった。

やがて馬車が止まったのは、昔金玉均が暗殺された、東亜洋行と云うホテルの前である。するとまっさきに下りた村田君が、馭者に何文だか銭をやった。