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「しなゆうき」

支那游記

芥川 竜之介

芥川龙之介受报社之命游中国,出发前还笑话朋友怕晕船,结果自己一上船就吐得稀里哗啦。这趟旅行到底会见识到啥?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,859 字 · 105 页

青空文庫

其処へ一台の自動車が、まっ直ぐに河岸を走って来る。薔薇の花、絹、頸飾りの琥珀、――それらがちらりと見えたと思うと、すぐに眼の前から消えてしまう。あれはきっとカルトン・カッフェへ、舞蹈に行っていたのに違いない。その跡は森とした往来に、誰か小唄をうたいながら、靴音をさせて行くものがある。Chin chin Chinaman ――私は暗い黄浦江の水に、煙草の吸いさしを拠りこむと、ゆっくりサロンへ引き返した。

サロンにもやはり人影はない。唯絨氈を敷いた床に、鉢物の蘭の葉が光っている。私は長椅子によりかかりながら、漫然と回想に耽り出した。――呉景濂氏に会った時、氏は大きな一分刈の頭に、紫の膏薬を貼りつけていた。そうして其処を気にしながら、「腫物が出来ましてね。」とこぼしていた。あの腫物は直ったかしら? ――酔歩蹣跚たる四十起氏と、暗い往来を歩いていたら、丁度我々の頭の上に、真四角の小窓が一つあった。窓は雨雲の垂れた空へ、斜に光を射上げていた。そうして其処から小鳥のように、若い支那の女が一人、目の下の我々を見下している。四十起氏はそれを指さしながら、「あれです、広東※は。