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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

「じつは矢堂玄蕃の吟味で困ったことになっているんだ」と宗兵衛が云い、直衛が遮ろうとするのに手をあげて続けた、「いや、玄蕃個人の問題ではなく、こんどのことで改新御定法そのものが壁につき当ってしまったんだ」

「こんなところではしようがない、おれの部屋へゆこう」と云って直衛は刀をみせた、「それとも組み太刀をやるか」

宗兵衛は眼で否と答えた。直衛は大股に庭のほうへあるきだした。着替えをした直衛が居間へはいってゆくと、宗兵衛は茶托へ茶をちょっとそそぎ、それで懐紙を濡らして、指に付いた朱墨を拭いていた。

「要屋のしょうばいは知っているな」と直衛が坐るのを待って宗兵衛が云った、「呉服、染物、什器のあきないに、両替と質屋をやっている」

「表向きはな」と直衛が云った。

「金貸しもやっているという噂だが、これは証拠があがらない」と宗兵衛が云った、「要屋は小商人や貧乏な者は相手にしない、武家なら二百石以上、商人なら土蔵持ち、農家も地主でなければだめだ、そういう者は借財していることを内密にするから、公式には誰も証言しようとしないんだ」

「御定法の改新まえなら、踏込んでいって帳簿を押収することができた、もちろん」