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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
「それならなおさら、少なくとも朝倉さんぐらいには相談すべきじゃあないか、独りで責任を負ってもし失敗したらどうする」
「万に一つもそんな心配はないよ」と云って直衛は声を出さずに笑った、「くよくよするな、見ていればわかるさ」
宗兵衛は信じかねるように首を振り、御諚書はいつ書くのかときいた。
「そんなものは書かない、まず精士館で二三日、みっちり躰力をつけることにするよ」
御殿下の家には佳奈が来ていた。
「珍しいな、なにか用事か」
「お着替えをなさいな、いまお茶を淹れて、それこそ珍しいお菓子をさしあげますから」
「えーと」直衛はなにか云いかけたが、まあいいと片手を振った、「菓子よりも今日は酒を飲みたいんだがね」
「こんな日中からはいけません」
「もう一と月も飲んでいないんだ」
佳奈はかぶりを振った。
「吟味も今日で終ったし、かな公と祝言の日どりもきめたいんだ」
佳奈はまたかぶりを振り、早くお着替えなさいまし、と云って奥へ去った。直衛は眼を細くし、やっぱり昔の佳奈だな、と心の中で呟いた。着替えをするとき若い家士に、酒の支度を命じたが、家士は微笑しながらなま返辞をするばかりで、承知したとは云わなかった。