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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

中所直衛は、そんな空気がひろがるのを承知のうえのように、念を入れて訴状の再確認を終り、さて、と云って要屋主従を見た。

「以上はこれまでの吟味によって、一条ずつ詳しく取調べたものであるが、改めて、事実に相違ないかどうかを聞きたい」直衛は訴状を巻いて膝の脇に置きながら云った、「要屋のあるじ喜四郎、返答を申せ」

「これはご念の入りました仰せ」喜四郎は両手をおろし、直衛を見あげながら答えた、「こんにちまでたび重なるご吟味にも明らかなるとおり、差出しましたる訴状の始終、些かたりとも事実に相違するところはございません」

「しかと相違ないか」

「些かも紛れはございません」

直衛は扇子を取って膝に置いた、「ときに、奉行はまだ不案内であるが、要屋の業態を聞こう」

喜四郎は番頭に振向いた。番頭の五助が両手をおろし、おそれながら私より申上げます、と云いかけたが、直衛は制止し、あるじ喜四郎から聞こうと云った。

「申上げます」と喜四郎がむっとしたように答えた。

「これもご吟味のはじめにお答え申しましたが、業態はお届けのとおり、呉服太物、家具什器の販売にございます」

「そのほか役所に届け出でず、陰にて営むしょうばいはないか」