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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

「さようなものはなかったと、申上げるよりほかにお答えはございません」

「そうか」直衛は持っていた訴状と、証文の束を取って投げだした、「では申し聞かせるが、そのほうの訴えは事実無根だぞ」

「それは仰せともおぼえません」喜四郎はけしきばんだ、「私のほうには証拠の帳簿もあり証文もございます。それをただ事実無根だと仰せられても、私には理解がつきかねます」

「お上の眼をかすめて金貸しをしながら、それは番頭いちにんの仕業であるじ喜四郎がなにも知らぬ、ということも奉行には理解できない」直衛の言葉はまだ穏やかであった、「また、この訴訟の初めに、三分の二を支払うから訴えを取りさげるよう、さる方から交渉したところ、そのほうはたってお裁きをと申し立てた、しかし奉行が下吟味を続けるうち、こんどはそのほうより三分の二の支払いで訴えを取りさげたいと願い出た。金貸しの件といい訴訟のことといい、そのほうの仕方にはうろんなところが多い、帳簿も証文も、謀版謀書のできないものではないのだ、矢堂玄蕃に対する訴えは事実無根と認めるぞ」

「その証拠がございますか」喜四郎はあとへはひかなかった、「私の差上げました証拠が事実無根と仰しゃるなら、これが事実無根であるという証拠を拝見したいと存じます」