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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
なんの表情もないその横顔を、矢堂玄蕃はとりすがるような眼つきで見まもってい、やがて、直衛はゆっくりと矢堂のほうへ振向いた。
「私は祖父から、こういうことを云われました」と直衛は云った、「――侍も人間であるからには、人間としてのあやまちや失策のないことは望めない、けれども、侍としてゆるすことのできないものが二つある、――一つは盗みをすること、一つは死にどきを誤ること、この二つは侍にとって、理由のいかんにかかわらずゆるすことはできない、ということでした」
矢堂はびくっとして直衛の顔を見た。まるで平手打ちでもくったような眼つきで、同時に、膝の上の両手を強く握り緊め、また折れるほど首を垂れた。
「わかりました」と矢堂は囁くような声で云った、「みれんなことを申して恥入ります、どうかお忘れ下さい」
「お帰りなら待って下さい」と云って直衛は立って出てゆき、すぐに、紙包を持って戻ると、それを矢堂の前に差出した、「――この中に要屋へ返済する分がはいっています、帰りに要屋の店へ置いていって下さい」
「これは」と矢堂は眼をみはった、「いや、こんなことをしていただく筋はありません」