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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

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評判だけあって、中々美人が多い、某先生の如きは、大枚五両のチップをはずむと聞いたが、如何なものか、私は五両はおけないから、五十銭を奮発して引きさがった。

タイガーの向いに路地があってそこを俗に食傷新道といっている、若松というしるこ屋は古くからここにある。もとこの角が絵葉書屋で、銀座にいた頃、小遣いをもらうと弟などとよくここへ来て食べたものだった。二階があって一寸した小座敷があり、粋な婦人などもよく来ていたものであったが、今は小さいバラックで椅子テーブルになっている様である。いつか私も甘いものといえば一口も咽喉を通らぬ様になって、今は隣の湯豆腐、その又となりの鉢巻の岡田の方へ足が向く様になった。

この鉢巻の岡田というのはそう古い事ではない様に思われるが、主人は感じのいいたくましい若者で、江戸前の顔に角がり頭、それに新しい手拭で鉢巻をしている。酒もうまく、魚は上等、馬鹿貝のちょっと焼いたのなどは全くうまい。ここをつき当ったところに去年から丹緑堂という浮世絵店が出来たが、他の店とちがい主として初期の肉筆の浮世絵を売るので有名、これまでになか/\珍品を出して主人上村君の名が高くなった。