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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

こういう感じも震災とともに失われてしまったが、しかし、丹緑堂の前に立って二十年前を考えている中にやはり、三十間堀は三十堀らしい感じが出ているのに気付き出す、土地の色というものは不思議なものである。

さて本通りにもどる。タイガーの二、三軒先に荒井真画堂という、これも額や洋画を売る店がある、この店については私にいろ/\の思い出がある。この店も古い店で私が物心つく時分からあって、洋画のすきな私はよくこの店の前に立ったものである。

私が十歳位の時であったか、この真画堂にアラビア馬の油絵があってそれがほしくてならず、店の番頭さんの今井さんにつれられてそれを買いに行ったところ、当時の値段で、十何円とかいう高価である。今井さん、大いに困って、店の人を語らい、どうしてもほしいという私に、これは店の看板であるから売れないといってもらってようやくなだめ、その向いの尾張町の勧工場というので、小さい碁盤のおもちゃを買って、帰った事がある。その後、第一回の文展に出品された倉田白羊君筆の、どこか裏町に小橋がかかっていて、道に日光がさしているところと、蔭になっているところが実に真に迫ってかけているのが懸かっていたが、もうその時分には私も白馬会へ洋画の稽古に行きはじめていて、この絵にひどく感心し、折にふれては見に行き、どうかしてああいう