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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

細い一間半位の通路の両がわに、玩具、絵草紙、文房具、はては箪笥、鏡台、漆器類、いろ/\のものを売る店があって品物をならべた「みせだな」の一角に畳一畳位の処に店番の人が小さな火鉢や行火をかかえてちんまりと座って、時分時にささやかな箱弁当でも食べていようという光景はとても大正昭和の時代にはふさわない。

夜の灯が電気に占有されたのは大正初めからだが明治時代は一般には石油ランプ、それがおいおいガス灯になったものだが、銀座の勧工場は早くから電気灯がついていた。子供の時分、一丁目の丸吉の勧工場へ夕方行っていて、不図天井を見た時、長い廊道の天井に一列についている電気がスーッと一どきについたのを大へん美しく思い、それからよく夕方その電気のともるのを見に行ったものであった。宅の隣の勧工場には早くからアーク灯がついていてその光りの色を私は大へん好んだ。夏になると虫が沢山とんで来て、朝になると、カーボンが歩道の上に落ちていた。明治三十四、五年頃のことか隣の勧工場ではガス会社が宣伝のために出張して、美しいガス灯ランプや、ガス風呂、ガス釜など陳列していたが腕白な私がよくそこへ遊びに行きガス会社だからとて得意のガスを発砲してはふざけたものであった。