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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

二丁目は私の生れたところ、角の菊屋は有名だったが今は銀行の敷地となっている、堺包丁店は十年位の店であろう。もとこの辺には月勝というそば屋や下駄屋、カバン屋などがあった。柴田絨店、米田洋服店、明治屋、海老屋、越後屋、近常、みな昔のままのところに栄えているのは喜ばしい。越後屋の店が近頃陳列風になったのは少し安っぽい。この店の品は誠に上等で、山の手の極いいところに得意が多い由、そのかわり昔は少々高価であった。私の家はその向い側で今の老主人は私達が、盛んにあばれて屋根に上ったりしているのをみて、ハラ/\して、店の者まで注意してくれたりした人だ。今もって御健勝の由慶福のことである。服部時計店はやはり四丁目でないと板につかない。ここはもと私の家の店と、勧工場のあったところ、私の店が勧工場の一部に移ってから、その跡に久しいこと救世軍の本営があった。英章堂という筆屋も古いが、先だってから締っているのは惜しいことである。東側の角には伊勢幸という洋服屋があり、婦人服を出していたのも珍しく、隣が福田屋という掛物の菓子屋で、よくそこで落がんなどを買ったのもなつかしい。