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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

銀座の夜店は私のもの心づく時分から盛であった。この節はまたちょい/\見かけるが、昔は午前中から、いろ/\の露店が出ていた。この露店に売るものや売る人にもいろ/\の推移や思い出があるが、長くなるからほんの少しばかりかく事にしよう。今も昔も変らないのが骨董の夜店であるが、銀座の夜店の骨董に真物なしといわれるまでに、イミテーション物が多いのは事実である。が、時にはいい掘り出しもあったとか、あるとか、私には経験はない。が、今は山の手なり郊外なりの御夫婦づれなどが、この骨董の露店の前に立ったり、しゃがんだりしているのを見ると私は何となくいい感じを持つ。そういう人たちの心持ちの中には美しいものがあるように感じられる。花屋の前に立ってチューリップの一鉢を買うのも可愛いいが、これが安物の骨董となると一層二人の可愛らしい趣味なり心得なりが感じられるようである。

私の家の前にはいつも「正」さんという老人の骨董屋さんが出ていた。紀の国橋を渡って木挽町の方へしばらく行ったところにこの正さんの古物骨董の店があって、正さんは雨さえふらなければ毎夕車の上に荷をのせて、私の家の前にうすべりを敷いてむずかしい顔をしてだまりこくって座っていた。