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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
中にも一番勇気のある一郎君は、たちまち正気にかえって、筏が洞穴の奥の方へ、非常な早さで流れているのに気づきますと、いきなり、
「頭を下げて、みんな、頭を下げて、筏の上にうつぶせになるんだよ!」
と、喉もやぶれるような大声で、さけびつづけました。
どうしてそんな大声をしなければならなかったかというと、洞穴の中の水の流は、ゴーッゴーッと、まるで雷のような恐しい音を立てていたからです。
保君と哲雄君とは、その声をかすかに聞いて「ア、そうだ」と気づいて、大いそぎで、筏の上に平べったく、「伏せ」の姿勢になりました。それはいうまでもなく、洞穴がせまくなっていて、頭をうつといけないからです。すごい早さで流れているのですから、岩角で頭でもうとうものなら、そのまま死んでしまうかも知れないからです。
そうして、三分ほどの間、少年たちは生きた心地もなく、筏の上にうつぶせになったまま、身動もしませんでした。あまりの恐しさに、物を考える力も失ってしまって、何をどうしていいのか、まるでわからなかったのです。
その三分間に、筏は一マイルも進んだような気がしました。それほど穴の中の水の流が急だったのです。