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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
それにね、うまいことがあるんだよ。ボートが船尾につなぎっぱなしになっているんだ。オールもちゃんとついている。あいつたち、酒に酔っていて、面倒くさいものだから、ボートを船に上げなかったんだよ」
「エ、ほんとうかい。じゃ、行って見よう」
三人は階段を上って、甲板に出て、舵手に気づかれないように注意しながら、物の陰を伝って、船尾にたどりつきました。
暗い海をのぞいて見ますと、いかにも一艘のボートが、船尾につながれて、親舟の四五メートルうしろから、ガクンガクンと首を振るようにゆれながら、ついて来るのです。
風は静かで、波というほどの波もなく、空には砂をまいたような星の光、メナド港の方角を見れば、まだ港のともし火が、空の星とはちがった色で、チラチラと見えています。さいわい、船の速度がにぶい上に、天候といい、港からそれほど遠くないことといい、おまけにボートまでそろっているのですから、こんなよい折がまたとあろうとは思われません。
「綱渡をするんだね」
「ウン、でも、ぐっとたぐりよせれば、三メートルぐらいの長さだよ。わけないよ。ただ、決心さえすればいいんだ」
三人の中では一番豪胆な一郎君が、ほかの二人をはげますように言いました。