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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

一郎君がうれしそうに言いますと、考えぶかい哲雄君は、まだ安心は出来ないというふうで、

「でも、変だねえ。ごらん。星の見えるのはあんな細い空だけじゃないか。雲でかくれているのかしら。なんだかおかしいよ」

といぶかりました。

「ア、わかった。雲じゃないよ。岩山だよ。僕等の両側に高い岩の崖がそびえているんだ。だから空があんなに細長くしか見えないんだよ。ね、そうだろう。よく見てごらん」

一ばん目ざとい保君が、早くもそれに気づいて言いました。

もうここは洞穴の中ではありませんから、いくら暗いといっても、あたりの様子がかすかに見わけられるのです。

「ア、そうだ。両側はとてもすごい岩の壁だよ。僕たちは今、深い谷底を流れているんだねえ」

岩山の高さは何十メートルとも知れぬほどで、それがけずったように、まっすぐにそびえていて、流の幅はわずか七八メートルしかありません。大きな大きな岩の裂目のような場所なのです。筏をつけて上陸する岸などは、どこにも見あたりません。

広い洞窟の中では、あれほどゆっくり動いていた水も、この狭い谷底では、かなり早く流れています。水に手を入れてみますと、筏がグングン進んでいるのがわかるのです。