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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
あとにはオールがただ一本。一本のオールでは漕ぐわけに行きません。いよいよ運のつきです。泣いたとて、わめいたとて、遠く海岸をはなれた真夜中の海の中、誰が助けに来てくれるものですか。
それに、アアどうすればいいのでしょう、さいぜんまで星のようにきらめいていた、メナド港の燈火さえ、いつしか見えなくなっているではありませんか。ボートはもう、それほど遠くおし流されてしまったのです。
ただ一面の闇の中、黒い風、黒い波、その恐しいざわめきにまじって、子供の泣声が聞えて来ました。一番無邪気な保君が、犬といっしょに泣いているのです。
一郎君も哲雄君も、その悲しげな声を聞きますと、胸の底からグーッと何かがおし上げて来て、ポロポロと涙が流れるのを、どうすることも出来ませんでした。
三人は声をそろえて泣き出してしまったのです。なつかしいお父さまやお母さまの名を呼んで、まるで赤ん坊のように、泣き叫ぶのでした。そのまにも、ボートは暗闇の沖へ沖へと、行方もしらず流されて行くのです。矢のようにおし流されて行くのです。アア、かわいそうな三少年の運命は、一体どうなることでしょうか。