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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「オイ、それなら安心したまえ。僕達はちゃんと食料を持っているんだよ」
二人の話をだまって聞いていた保君が、なぜか急にニコニコして口だしをしました。
「エ、食料だって? 何いっているんだい。からかうんじゃないよ」
「へへへ……、そうくるだろうと思った。ところがちゃんとここに食料がかくしてあるんだよ。ほしくないのかい。僕一人でたべてもいいのかい。エヘン、僕さまはやっぱりえらいなあ」
保君は肩をいからせ、両手で握りこぶしを造って、それを自分の鼻の上に重ねて、天狗の真似をして見せました。茶目のタア公は、こんな時でも、つい日頃のくせが出てしまうのです。
「ほんとかい? じゃあ見せてごらん」
一郎君がそれにつられて、笑顔になって言いますと、保君はボートの底から白い布の袋のようなものを取出し、その中から、大きなバナナの房をニューッとさし出して見せました。
「アッ、バナナ!」
一郎君と哲雄君とは、思わず一しょに叫んで、その方に手を出しました。そして、保君がちぎってくれたバナナを受取りますと、いきなり皮をむいて、その水々した白いおいしい実にかじりつくのでした。
海賊船を逃出す時、保君が白い袋を大切そうに持っていたのを、読者諸君はごぞんじでしょう。