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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

なつかしい故郷を何千里はなれた、熱帯の海のもくずと消えるのです。誰知るものもない、はかない最期をとげなければならないのです。

しかし、少年たちはそんなことを考えているひまもありません。次から次とおそいかかって来る波しぶきに、息をするのもやっとの思いで、舟の上にいながら、今にもおぼれ死しそうな気がします。

「お父さーん、助けて下さーい」

三人は心の中で、何度そう叫んだか知れません。でも、お父さまも、お母さまも、遠い遠い日本にいらっしゃるのです。いくら叫んだとて聞えるはずもなく、助けに来て下さるはずもありません。

「ア、苦しい、助けて……」

一番体の弱い哲雄君が、波のために息も出来ぬ苦しさに、思わず悲鳴をあげました。でも、誰も答えるものもありません。みんな自分のことで精一ぱいなのです。

波はいよいよはげしく、ボートは浮いているのか、沈んでいるのか、わからなくなってしまいました。もう波しぶきというようなものでなく、三人の顔はたえ間なく水の中につかっていて、まったく息が出来なくなってしまいました。

「アア、今死ぬんだな」

三人はめいめいそれを感じました。もう何も聞えず、何も見えず、ただ自分の魂だけが、スーッと深い深いところへ、沈んで行くような気持がして、そして、少年たちは、次々と気を失って行くのでした。