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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
水が飲みたくてしかたがないのです。
水は目の前にあるのですが、海の鹽水ではしかたがありません。
「どこかに川か井戸がないかしら」
保君が、青々とした深い森の方を見ながらつぶやきました。
「井戸だって? どこにも人の家が見えないんだから、井戸なんてあるはずがないよ。……でも、いったいここは、どこの国なんだろうね」
哲雄君が、心細そうにつぶやきます。
「いやに淋しい海岸だね。一艘の舟も見えないし、家らしいものもないし、……やっぱり南洋のどこかの島にちがいないけれど……ひょっとしたら野蛮人の国かも知れないぜ」
保君はそういって、おそろしそうにあたりを見まわしました。眼もはるかにズーッとつづくでこぼこの岩と砂の海岸に、舟はもちろん、人の姿も動物の姿も見えず、まるで死にたえたように静まりかえっている様子が、何となくただならぬ感じです。
こんな荒れはてた土地に、もし人が住んでいるとしても、どうせ恐しい野蛮人にきまっています。もしかしたら、話に聞く人喰人種の国かも知れません。その上、あの深い森林の奥には、どんな猛獣がすんでいるかわからないのです。
三人はそこへ気がつくと、思わずおびえた目を見かわしました。