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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
ても、保君は帰って来ませんでした。
「どうしたんだろうね、変だなあ」
「森の中に迷って、困っているんじゃないだろうか」
「そうだね、アア、いいことがある。鉄砲をうって、方角を知らせてやろうよ。そうすれば、もし道に迷っているとすれば、こちらがお家だっていう事がわかるわけだからね」
「ウン、それがいい。じゃ僕が銃をうつよ」
そこで、一郎君が、猟銃を取出して、空に向かって、一発ドーンと発砲したのですが、それからしばらく待っても、保君は一こう帰って来る様子もないのです。
「じゃ、今度は焚火をしようよ。ドンドン火をもやせば、遠くからでも見えるわけだからね」
哲雄君の考えで、すぐさま枯枝を集めて、焚火をはじめました。すると、モクモクと立ちのぼる煙に、真赤な焔がうつって、二十メートルも高い空が、赤々と輝いて見えるのですが、その焚火を一時間もつづけていても、やっぱり保君は帰って来ません。
「おかしいなあ、どうしたっていうんだろう。猛獣にでも出あって、ひどい目にあっているんじゃないかしら」
二人は思わず目を見合わせて、黙りこんでしまいました。何ともいえぬ不安な気持です。大きなオランウータンにつかまってもがいている、保君のかわいそうな姿が、マザマザと目に見えるような気さえします。