轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

「でもなお、大給の松平五左衛門様のところへお遣わしになったお使者がもどりませぬゆえ、その返事もわからぬうちは、すぐに御門は立てませぬ」

「オオ、松平どののお答えは、今夕までにあるはずだったが、まだその使者も帰らぬか」

風の音が、またひどくなった。

その雨なきあらしに似た中を、馬にムチ打って、ここへ帰って来た者がある。

「殿は。お支度は」

大給の松平五左衛門近正の屋敷から駈けもどって来た一家臣は、なぜか、眼のいろ変えて、あわてていた。

松平近正は、かねてから、石川数正と、ある黙契をもっていた。

(御辺が、徳川家を去らるるなら、自分も徳川家にいたくない)

と洩らすほど、近正も、同族の中から爪弾きされ、多年、不遇におかれていた。不遇が結びつけた仲なのである。

そこで数正は、今夕、大給へ使いをやって、

(今夜、岡崎を立ち退き、かねての行き先へ、落ちて参る。鳴海の船着きにて、待ち合わせ候え)

と、手はずを、告げた。

ところが今。――その使者が帰ってのはなしによると、数正と運命を共にすることには、家族の内で、反対が起り、間際になって、大揉めに揉めているというのである。