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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
――同時に、自分も、針のむしろの生涯から、座をかえて、住むことができよう。
これが、数正の本心として、友に、云いたいことだった。
けれど、その、いとまはない。伝右のまなこは、らんとして、すでに殺気を――数正と刺し交えようとする態を示している。
数正はぜひなく、
「伝右、もう時刻がない。おぬしとも、お別れじゃ。さらばぞ」
云いすてて、つと、席を離れかけた。
「や、やらぬ」
伝右は、果たして、刀のさやを遠く投げすて、数正の胸元目がけて、だっと、突いて来た。
――とたんに、紙燭が仆れて、暗黒の中に、白い糸のような、煙が曳いた。
「乱心したか。伝右っ」
「なんの、乱心は、伯耆守こそ。――伝右は、正気じゃ。国を売る忘恩の賊を、成敗せいで、何とする」
「あぶない。刃を引けい。話せばわかる」
「いや、聞く耳はもたぬ」
屋鳴りの中に、ふすまは破れ、調度は仆れた。――と、同時に、隣室や壁の蔭に、主人の身を案じて隠れていた数正の家臣たちも、つむじの部屋へなだれ入って、さらに、大きな震動をたてた。
「あっ。……待てっ、斬るな。伝右衛門に、傷つけるな」
捻じ伏せた一人の上に折り重なって、あわや、伝右衛門の首を掻っ切ろうと、争い合っていた家臣たちは、数正のことばに、